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贈与税の暦年課税がなくなるって本当ですか? の巻

町田の税理士 高橋浩之 です。


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贈与税の暦年課税がなくなる⁉

今年(2021年)になってからの、税理士の間での旬な話題といえば「贈与税の暦年課税がなくなる⁉」*1

贈与税の暦年課税とは、1年ごとの贈与に贈与税をかけるという制度(おなじみのところでは、年間110万円までなら贈与税がかからないというのも、この制度によるものです)。これがなくなるかもしれない⁉

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なぜでしょう。

ここに、同じだけの財産をもつAさんとBさんがいます。

Aさんは、息子に財産の一部を贈与しました。Aさんが亡くなったときは、贈与した分だけ財産が少なくなるので、相続税もその分少なくなる。一方のBさんは贈与せず。したがってBさんの財産はそのままで、相続税も減らない。もちろん、Aさんの贈与には贈与税がかかるはず。とはいえ、年間110万円の範囲内なら、タダで財産を移せるわけで。結果────トータルの税金では、AさんとBさんにはそれなりの差が出てしまう(Aさんの税金のほうが少ない)。

もとの財産が同じなんだから、それはおかしいんじゃないの。外国はそんなことになっていないみたいだし。どうにかしなくちゃ*2。これが、暦年課税をなくそうということの根拠になる考えです。

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ただし、「暦年課税がなくなる」というのは、生前贈与を禁止することではありません(当たり前)。贈与をしたとしても、亡くなったときには、贈与した財産も遺産に含めて、全体に相続税をかける制度に変えようじゃないか。これなら、生前贈与してもしなくても、結果は同じだし。こんな方向性です。

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*おやじさんが亡くなったときは、ビル(とその敷地)は、おやじさんの遺産に取り込まれて相続税がかかる。ただし、相続税がかかるのは、いくら値上がりしていようとあげたときの価値に対して。


もちろん、いつからなんて決まっていないし、そもそもそうなると決まったわけではありません。でも、すぐでないにしても、数年のうちに「暦年課税がなくなる」可能性大。まずは、2022年度税制改正大綱に注目です。

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*1:*今年になっての旬な話題「暦年課税がなくなる⁉」
じつは、これは数年前から国の方針として示されてきたもの。それが今年にあって、にわかにブームのようなことになっているのです

*2:*おかしいからどうにかしなくちゃ
国の表現では「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討」。生前贈与するしないにかかわらず、税負担は一緒にしようね、ということです。