社長のためのじょりじょりわかる!税理士ブログ

ややこしいことを、ややこしくなく

103万円の壁。壁の正体は収入ではない、の巻

町田市の税理士 高橋浩之 です。


*配偶者控除は、旦那が働いて奥さんが控除の対象、というパターンが多いので、以下その例によっています。

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超えてはいけない103万円の壁(?)

103万円の壁という言葉があります。収入が103万円以下つまり103万円ちょうどまでなら配偶者控除が受けられる。でも、103万円を超えたらダメ。配偶者控除は受けられないし、場合によっては旦那さんの給与にふくまれる配偶者手当が削られる。こんなことから、超えたらいけない壁(?)といった意味合いで使われることが多いですね。収入はその中におさえなくちゃ、ということでいろいろと苦労します。

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 *この壁は超えたらいけない壁(?)

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壁を超えていないのに配偶者控除が受けられないという悲劇

紹介するのは、収入が103万円の壁を超えていないのに、配偶者控除が受けられないという悲劇 ──

専業主婦だった奥さんが自宅の一室で、ネイルサロンを開業した。いま流行のプチ起業。ことのほか好評で、口コミでお客さまが増えて、月に10万円近く稼げるようになってきた。技術が売りだから材料代などを引いても8割くらい儲けだ。

でも、喜んでばかりではいられない。このままだと収入が103万円を超えてしまう。あぶない、あぶない。年末は仕事を受けないようにしよう。
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やりたい気持ちをグッとおさえ、年間の収入をなんとかギリギリ103万円以下におさえた。めでたしめでたし。これで配偶者控除を受けられる。旦那のよろこぶ顔が目に浮かぶ・・・
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じつはこのケース、配偶者控除は受けられないんですね。どうしてでしょう? 103万円の壁超えていないのに。もしかしてダンナの給与が多いから? でも、そんなこと聞いたことない。どうしてでしょう?

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なぜかというと、壁の正体は収入ではないから

103万円の壁。じつはこれ、正しくは38万円の壁、なんですね。配偶者控除を受けるためには、配偶者の所得が38万円以下であること。こういう要件なんです。壁の正体は収入ではなかった! しかも金額は38万円!

収入からなにかを差し引いたのが所得。この両者はまったくの別ものです。

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パートと起業では、差し引くものがちがう

パート収入の場合は、給与なので差し引くのは給与所得控除。収入に応じてきまります。103万円以下の給与なら、給与所得控除は65万円になり、差し引きのこりは38万円以下。これが所得で、配偶者控除が受けられる、というわけ。

これに対して、起業した場合の収入は給与ではありません。給与所得控除は使えないんですね。代わりに実際にかかった必要経費を差し引きます。上のケースでは、月10万円の収入で、必要経費を差し引いたあとの儲けが8万円だとすると、年間の儲け(=所得)は38万円を超えてしまう。したがって、配偶者控除は受けられない、というわけ。

パート収入のケースが多いので、103万円の壁という言い方をします。でも、パート収入でない場合だってあります。そのときは収入だけみるのは危険です。所得がカギですから。ご注意を!



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