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損失と欠損、このふたつの金額がちがうのはいけないような気がする・・・、の巻

町田市の税理士 高橋浩之 です。


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繰越損失の金額と繰越欠損の金額がちがうんだけど

決算書をみていると、繰越利益剰余金という言葉をみかけます。略して繰越利益。これがマイナスのときは繰越損失ということがあります。

法人税の計算では過去の赤字を差し引くことができます。この赤字のことを繰越欠損金といいます。略して繰欠(くりけつ)。

あるとき、ある社長に指摘されました。「繰越損失と繰越欠損の金額がちがうんだけど、いいの?」

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繰越損失の金額と繰越欠損の金額はちがっていていい

ある社長の指摘。「繰越損失と繰越欠損の金額がちがうんだけど、いいの?」うむ、いわれてみれば、損失と欠損、そのふたつの金額がちがうのはいけないような気がする・・・。でも、いいんです。間違いではありません。なぜかというと──

1)元となる金額がちがう
決算書に載る利益と税金の世界の利益はおなじではありません。似たような金額のこともありますけどちがう。赤字もしかり。単年度だけで比べても、ある年度の決算書の赤字と税金の世界の赤字はちがうのです。それが年を経て蓄積されると、その差はますます広がることに。

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 *決算書の利益 税金の世界の利益

2)集計の期間がちがう
決算書に載る繰越利益(損失)の集計期間は無制限。設立からその年度がおわったときまでのすべての年度の利益の合計額が繰越利益(損失)なんですね。これに対して、繰越欠損金の集計期間は、最高でも過去10年。それよりも前に発生したものは、残念ながら、なかったことにされてしまいます。

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 *税金の世界の赤字は、無制限に集計しない
 
ということで、おなじ赤字でも中身がちがう。さらに集計期間もちがうということで、繰越損失と繰越欠損、言葉は似ているけれど、その金額はちがって当たり前というわけ。ときには、繰越利益がプラスなのに、繰越欠損金があるなんてことも珍しくないんですね。


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