社長のためのじょりじょりわかる!税理士ブログ

ややこしいことを、ややこしくなく

誰も稼いでないけど、町中の誰もが借金を返し終り、ほんとうは何も変わっていない話、の巻

町田市の税理士 高橋浩之 です。


ひょんなことから、おもしろいお話をみつけました。作者など詳細は不明。もしかして有名な話かな。いや、わたしだけが知らなくて世間の誰もが知っている話ということはないとおもいますので・・・。すこし長いけれど全文を紹介します。

ときは8月、黒海沿岸の町。雨にぬれる小さな町は活気がなく、すっかり寂れていた。人々は借金を抱えて苦しい生活をしているのだ。

その町へ、ひとりの旅人がやってきた。そして町にひとつしかないホテルに入ると、受付のカウンターに100ユーロ紙幣を置き、部屋を選ぶために2階へ上がって行った。

ホテルの主人は100ユーロ紙幣をひっつかんで、借金返済のために肉屋へ走った。 f:id:taxjolly:20161015172640p:plain
肉屋は同じ紙幣を持って養豚業者へ走り、100ユーロの借金を返した。養豚業者はその紙幣を握ると、つけにしてある餌代と燃料代を払うために販売業者に走った。

販売業者は100ユーロ紙幣を手にすると、この厳しいご時世にもかかわらず、つけでお相手をしてくれる町の遊女に返そうと彼女のもとに走った。遊女は100ユーロ紙幣を懐にしてホテルに走り、たびたびカモを連れこんだホテルに借りていた部屋代を返済した。

ホテルの主人は、その100ユーロを受け取ると、紙幣をカウンターの元の位置に置いた。ちょうどそのとき、部屋をチェックして2階から降りてきた旅人が、どの部屋も気に入らないと言って100ユーロ紙幣をポケットにしまいこみ、町を出て行った。

誰も稼いでないけど、町中の誰もが借金を返し終わり、町は活気を取り戻した。


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なくなったのは借金だけじゃない

みんな借金がチャラになった。ハッピーエンド。よかったね。めでたし、めでたし。でも、そんなことってあり得るの?って感じですよね。なにか見落としていないか?

(始まり)みんな借金があって苦しい⇒(終わり)みんな借金がなくなり晴れやか。ところが、よく考えてみると、始めと終わりでは何も変わっていないんですね。すくなくとも会計的には。

ホテルの主人は肉屋に借りがあったけど、同時に遊女に貸しがあった。肉屋は養豚業者に借りがあったけど、同時にホテルの主人に貸しがあった。養豚業者は・・・(以下同じパターン)。ということで、それぞれの登場人物が誰かに借りがあり、誰かに貸しがある。それが、キャッシュが回ることで、そのどちらもなくなった──。

もらえるお金と払うお金が同額あったところ、その両方が同時になくなっただけのことなんですね。なくなったのは借金だけじゃなかった! 会計的には、誰もがその純資産に増減なし。売掛金と買掛金がそれぞれなくなっただけ。だから、町が活気を取り戻したのなら、それは、単に心理的なもの、なんですね。

このお話の中で、仲間はずれがあります。それは、販売業者の遊女に対するつけ。他はすべて事業に関係していますが、これだけは事業に関係のない債務。個人的なものです。ですから、この販売業者だけは扱いがちょっと異なる・・・どうでもいいですかね? そんなこと。


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*借金がなくなって元気を取り戻す(?)でも、じつは何も変わっていない・・・
(借金という心の重荷はなくなって、ホッとするということはあるけれど)


いや、じつはひとりだけ損をした人がいました。それはホテルのご主人。なぜか? お客をひとり逃してしまったわけですからね。←これを機会損失といいます。



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